
これは、私の知人である看護師Aさん(仮名)が実際に体験したという話です。
舞台は都内のとある総合病院。
長年使われていた東病棟の4階で、その“異変”は起こりました。
■ 誰もいないはずの部屋から…
その日も、Aさんはいつも通りの夜勤をこなしていました。
時刻は午前2時を少し回ったところ。
病棟は静まり返り、患者の寝息だけがかすかに聞こえる時間帯です。
突然、ナースステーションのモニターが「ピンポーン」と鳴りました。
画面に表示されたのは――「403号室」。
……Aさんは、一瞬フリーズしました。
403号室は、すでに数年前から“使用禁止”になっている空き部屋だったからです。
配線も外されており、通電すらしていないはず。
「機械の不具合かな……」
そう思いながらも、何かが胸に引っかかり、Aさんは懐中電灯を手にその部屋へ向かいました。
夜の病院の廊下というだけで、どこか異様な空気が漂います。
特に東病棟の4階は、老朽化が進んでおり、床はギシギシと音を立て、壁紙はところどころ剥がれ、まるで何かが“這った”ようなシミが残っていました。
403号室の前に立った瞬間、ドアの向こうから、小さく「ピンポーン……ピンポーン……」と確かに聞こえてきました。
Aさんは震える手でドアノブを回し、そっと中を覗き込みます。
中には、古びたベッドがひとつだけ。
カーテンがわずかに揺れている。
――窓は閉まっているのに、風はどこから?
そのとき。
背後から「ピンポーン」――
来たはずの403号室の、ドアのナースコールが再び光っていたのです。
そのときAさんは確かに、「カチッ」とボタンを押す音を背中越しに聞いたと言います。
だが、部屋の中には誰もいない。
■ ナースコールの履歴と「時間」
ステーションに戻ったAさんは、恐る恐る履歴を確認しました。
すると、ナースコールの履歴には、403号室からの呼び出しが、ここ4日間連続で“午前2時17分”に記録されていたのです。
この部屋には、人が出入りすることも、配線が通っていることもないはず。
だとすれば……このナースコールを押しているのは、一体誰なのか?
Aさんはしばらく言葉が出なかったと言います。
■ 過去の出来事
翌朝、Aさんは恐怖に駆られながらも、同じフロアで長く働くベテラン看護師にそれとなく尋ねました。
彼女は一瞬、無言になったあと、ぽつりと話し始めました。
「あの部屋にはね……昔、ある患者さんがいたの。
若い女性でね、ご家族にも見放されて、ずっと独りきり。
誰にも看取られず、最期の夜に……ナースコールを何度も押してたらしいのよ。
でも、みんな忙しくて誰も行けなくて……
朝になって様子を見に行ったら、ベッドの下で……
ナースコールのボタンを、握りしめたまま亡くなってたって」
Aさんは、その日以降、403号室に決して近づかなくなったといいます。
■ 403号室は消えたが…
数年後、病院の東棟は老朽化により取り壊され、新しい建物が建てられました。
403号室も、今はもう存在しません。
……ですが。
新しい棟でも、“4階の3番目の部屋”だけ、
なぜか夜中の2時17分にナースコールが鳴るという報告が、いまだに続いているそうです。
技師が調べても異常は見つからず、担当を変えても現象は止まりません。
あの夜、誰も来なかった“その人”は、
今もなお――
「誰か来て」と、呼び続けているのかもしれません。
※投稿者の知人による体験談をもとに、本人の許可を得て掲載しています。
心霊体験は人によって解釈が異なりますが、病院の“夜”には、確かに何かがあります。
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